2025年4月にアメリカのトランプ大統領は相互関税を発動することを表明し、その内容が明らかになりました。日本に対しては24%の関税を課すと発表しています。(出典:日経新聞)
この相互関税政策が、アメリカ、日本、中国の各産業へ与える影響を説明します。
アメリカが発表した各国への関税率
中国 | 34% |
日本 | 24% |
EU | 20% |
スイス | 31% |
インド | 26% |
韓国 | 25% |
相互関税政策による影響の概要
関税戦争において、勝者は報復関税を発動しない日本や東南アジアです。中立的な立場での恩恵があります。
一方、敗者はアメリカ(インフレ+輸出減)、中国やEU(輸出打撃)です。
ただし、勝者と言っても相対的なものであり、世界的な不景気の中では勝者はいないと言えます。
アメリカ

産業 | 影響 | |
農業 | ▼▼ | 国内向けにはプラスだが、輸出減少が打撃 |
製造業 | ▼ | 外国製への関税により国内製造業への代替が進むのはプラス要因 部品の輸入コスト増加と世界景気後退により業績悪化 |
自動車産業 | ▼▼▼ | 中国・EUの報復関税で輸出減少 部品輸入によるコスト増加 アメリカ企業によるメキシコ生産者にも関税がかかり業績悪化 |
小売業 | ▼ | 輸入品価格上昇で販売量減少 |
石油産業 | △ | 関税で国内生産が相対的に有利に |
プラスの影響
- 国内製造業(特に鉄鋼、アルミ、日用品):輸入製品が高くなることで国内品にシフト
- 農業(国内向け中心):関税障壁により一時的に国内市場に集中
マイナスの影響
- 輸出産業(自動車、航空機、農産物など):中国・EUからの報復関税で輸出が大幅減少
- 消費財・小売業:輸入品価格上昇によりインフレ+消費鈍化
中国

産業 | 影響 | |
農業 | △ | 国内需要強化とアメリカ品の代替で相対的に有利に |
製造業 | ▼▼▼ | アメリカ向け輸出減が痛手 |
自動車産業 | ▼▼ | アメリカ市場喪失で減速 |
小売業 | ▼ | 輸入品価格上昇で販売量減少 |
石油産業 | ▼ | 関税で輸入価格が上昇して業績に悪影響 |
プラスの影響
- 内需向け産業(食品、日用品、小売):輸入製品が高くなることで国内品にシフト
- 東南アジア・日本向けの輸出業:アメリカ市場向け輸出の縮小を代替市場で補う
マイナスの影響
- 輸出依存型製造業(電子機器、機械、自動車部品):アメリカへのアクセス喪失で打撃
日本

産業 | 影響 | |
農業 | △ | 中国やEUでのアメリカ製品のシェアを奪う |
製造業 | △ | 中国やEUでのアメリカ製品のシェアを奪う |
自動車産業 | ▼▼ | アメリカ向け輸出減が痛手 |
小売業 | ▼ | 輸入品価格上昇で販売量減少 |
石油産業 | ▼ | 関税で輸入価格が上昇して業績に悪影響 |
プラスの影響
- 輸出産業(自動車、機械、電子部品):中国やEUでのアメリカ製品のシェアを奪う
マイナスの影響
- 日本企業の米中拠点:それぞれの地域で関税リスクに直面
- 貿易不均衡への懸念:アメリカへの輸出が伸びる一方で、政治的な圧力や次の関税リスクが高まる
EU

産業 | 影響 | |
農業 | △ | 自給率向上や域内需要回帰の促進 |
製造業 | ▼▼ | アメリカ向け輸出減が痛手 |
自動車産業 | ▼▼ | アメリカ向け輸出減が痛手 |
小売業 | ▼ | 輸入品価格上昇で販売量減少 |
石油産業 | △ | エネルギー自立推進で恩恵も |
プラスの影響
- EU域内内需向け産業:米国依存から脱却し、域内経済活性化
マイナスの影響
- 輸出型製造業(自動車、機械、化学品):アメリカへの関税で競争力低下
- 農業:アメリカ市場へのアクセス減
東南アジア

産業 | 影響 | |
農業 | △ | 中国・米国の農産物不足を補完可能 |
製造業 | △ | 中国やEUでのアメリカ製品のシェアを奪う |
自動車産業 | △ | 部品供給・代替製造拠点として注目 |
小売業 | △ | 輸入品価格上昇で販売量減少 |
石油産業 | ▼ | 関税で輸入価格が上昇して業績に悪影響 |
プラスの影響
- 輸出型軽工業(衣料品、日用品、電子機器組立):中国やEUでのアメリカ製品のシェアを奪う
- ASEAN内貿易拡大:中国や日本からのサプライチェーン再構築需要
マイナスの影響
- 中国依存型経済:経済的な中国依存が進む
- 貿易不均衡への懸念:アメリカへの輸出が伸びる一方で、政治的な圧力や次の関税リスクが高まる
関連サイト
- アメリカ通商代表部:Reciprocal Tariff Calculations
- 日本経済新聞:米国公表の「相互関税」全リスト 日本24%、中国34%