アンティークコインと聞いて、「怪しい」と思う人は多いのではないでしょうか。しかし欧米の富裕層では比較的普及している投資方法なので、いずれ日本やアジアでも広まる可能性が高いです。投資人口が増えるとアンティークコインの値段が上がりやすくなります。
この記事では、アンティークコインについて詳しく説明します。アンティークコインの魅力、拡大する市場規模、長期的には値上がりが見込める資産価値、購入方法、値上がりするアンティークコインの条件、アンティークコイン投資の利益にかかる税金を説明しますので、ぜひご覧ください。
アンティークコインとは
アンティークコインとは、一般的に100年以上前に発行されたコインを指し、金や銀などの貴金属で作られていることが多いです。アンティークコインは、各国の国王の即位や国家的な行事などを記念して発行されることが多く、同じものは基本的にもう二度と発行されることはありません。そのため、年月が経つにつれて枚数が減って希少価値が高まることで、単純な金価格よりはるかに高額で取引されることがあります。
アンティークコインとひとくちに言っても、ヨーロッパ、アジア、日本、中国、アメリカ、南米など様々な国のコインがあります。その中で特に運用効率がいいのは、イギリスやフランスなどヨーロッパのコインです。ヨーロッパコインは、紀元前までにさかのぼる歴史や、少ない現存枚数(希少性)によって価値が裏付けられています。
たとえばローマ帝国などの統治者が代替わりするたびに、前権力者の権威を象徴する通貨などは破棄されるのが通例でした。そのため他国のアンティークコインと比較して希少性が高くなります。

アンティークコインは家宝として受け継がれてきました。それは、貴族階級が自分の子孫に伝承してきたもので、表に出ることはない財産でした。たとえば世界的に人気の高い「ウナとライオン」というコインは、1839年の英国でヴィクトリア女王が即位するタイミングで作られ、その数は400枚しか存在しない貴重な記念コインです。女王の家系、近親者、一部の側近などが手に出来る宝であり、親から子へ受け継がれてきました。
しかし、時代が流れるうち、由緒ある家柄であっても宝を手放すといったことがあります。その時、「売りに出ている」といった限られた情報は富裕層のみが知りえるもので、富裕層が買い手となり、購入し資産を形成してきました。
アンティークコインの魅力・メリット
資産としてのアンティークコインは、金と同様のメリットに加えて、高い芸術的価値や希少性からくるプレミアムがついているメリットがあります。
- 普遍的な価値:金は世界中でその価値が認められており、無価値になるリスクが極めて低いです。
- インフレ対策:金はインフレ時に価格が上昇する傾向があり、現金の価値が下がる状況でもその価値を維持しやすいです。
- 分散投資効果:金は株式や債券など他の資産とは異なる値動きをするため、ポートフォリオに組み込むことでリスクを分散できます。特に経済が不安定な時期にも、金は値上がりすることがあり、安定した資産形成に寄与します。
- 信用リスクがない:国や企業は破綻することがあり得ますが、金はそのような信用リスクがありません。
- 高い芸術的価値や希少性:それぞれのコインには独自の歴史があり、さらに芸術的価値もあります。
- 持ち運びやすい:災害などの非常事態の際に持ち運びやすい資産です。
アンティークコインを投資目的で購入した人でも、実際に購入するとコインに愛着がわきます。購入したコインの歴史背景を調べていくと、どんどんそのコインを売りたくなくなってしまうといいます。一度手にしたコインを手放したくない人が増えると、もともと少ないコインが市場に出回らなくなり、希少性がさらに高くなっていく、そういった理由でコインが高値になっている面があります。
アンティークコイン以外にも骨董品・現物資産としてはアートやワイン、ウイスキーもありますが、これらは良好な状態を保つための温度や湿度の管理が大変です。コインは保管するにも飾るにも場所を取らず、温度などの管理は不要なので、扱いやすいメリットがあります。
アンティークコインのデメリット
偽物を購入するリスク
アンティークコインを購入する際に最も注意が必要なのが、贋作(偽物)をつかまないようにすることです。未鑑定のアンティークコインには偽物があります。さらに、鑑定済みのコインと思って購入しても、鑑定が偽物である場合もあります。
偽物に価値はないため、大きな損失になります。
ネットで購入する場合はリスクが大きくなるので、リスクをできるだけ下げるためには老舗のコインショップで購入するほうがましでしょう。
コインの適正価格がわからず高値で購入するリスク
アンティークコインは種類や状態により価格が変わりますが、素人にはコインの適正価格がわかりません。購入した金額が適正であればいいですが、売り手やコイン商の言うままに購入することになりがちです。
値下がりするリスク
株などと同様に、アンティークコインにも値上がりするリスクと値下がりするリスクがあります。
アンティークコインの市場規模
現在、アンティークコインは世界で20万種類あると言われています。ヨーロッパやアメリカではコインフェアやオークションが毎週・毎月開催され、そのたびに億単位の取引がされています。また、市場規模も年々拡大しています。
リサーチ会社Market Research Futureによると、世界のアンティークコインの市場規模は、2022年に281.5億ドルと推定されました。その後、2023年に304.3億ドル、2032年に612億ドルと、約8%の年間成長率で成長すると予想されています。

アンティークコインの資産価値
アンティークコインをはじめとする骨董品は、株などの金融資産と同じく長期的には値上がりが見込めます。2023年に発表されたナイト・フランク社によるラグジュアリー指数(KFLII)によると、アンティークコインは1年で+4%、10年で+56%値上がりしています。

アメリカのコイン鑑定会社PCGSは、アメリカの3000銘柄のレアコイン相場を指数化したPCGS3000 Indexを公表しています。1970年からのチャート(左)を見ますと、1989年あたりにバブルになってはじけた様子が見て取れます。日本のバブルに似ています。その後はおおむね横ばいで推移していました。ここ10年ほどのチャート(右)をからは、2020年あたりを底に、1年あたり10%程度価格が上昇していることがわかります。アメリカ以外のコイン相場のデータは見つけられませんでしたが、おおむね似たような値動きをしていると推測できます。

アンティークコインの購入方法
アンティークコインは、コイン商やオークションで購入できます。ただし、オークションでは偽物が出回っている可能性があるため、ご自身で判断ができない場合は信頼できるコイン商で購入することをおすすめします。
値上がりするアンティークコインとは?
値上がりするアンティークコインは、希少性が高く、グレードが高く、人気があるコインです。
希少性高いコイン
現存する枚数が少ないコインほど希少性が高く、値上がりする可能性が高いです。目安として、発行枚数が数百枚~数千枚までのコインは希少性が高いと言えます。欲しくてもお金があっても買えない、そういったコインの価格は上がります。
グレードが高いコイン
同じ種類のコインでもきれいな状態のコインは多くの人が欲しがるため価格が上がりやすいです。鑑定は、コインの鑑定機関として信頼できるPCGS(Professional Coin Grading Service)やNGC(Numismatic Guaranty Corporation)で認定されたグレードを参考にするとよいでしょう。
人気のあるコイン
デザインがきれい、歴史的背景や特徴が広く認知されている、そういったコインは人気があり、価格が上がりやすいです。
また、人は自国のコインを購入する傾向があるため、現在はコイン収集家の多いヨーロッパやアメリカのコインに人気が集まっていますが、今後はアジアのコインにも値上がりの可能性があります。
アンティークコイン投資の利益にかかる税金
アンティークコイン投資で利益が出た場合は総合課税が適用されます。総合課税の税率は、所得税が合計の所得によって5%〜45%の7段階に分かれます(住民税は一律10%)。したがって、高所得者および利益額が多い場合は税金も高くなります。
譲渡所得は、所有期間が5年超か5年以内かで税金の取り扱いが変わります。
- 長期譲渡(所有期間5年超)の課税所得:{売却価格-(取得費+売却費用)-特別控除50万円}×1/2
- 短期譲渡(所有期間5年以内)の課税所得:売却価格-(取得費+売却費用)-特別控除50万円
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まとめ
この記事では、アンティークコインの魅力、拡大する市場規模、長期的には値上がりが見込める資産価値、購入方法、値上がりするアンティークコインの条件、アンティークコイン投資の利益にかかる税金について詳しく説明しました。