ROEは企業の利益を出す効率性や、成長速度を表す指標として使われています。成長株投資にとってこのROEは非常に重要な指標です。
この記事では、ROEと株主資本と配当の関係、ROEを使う際の注意点、そしてROEを指標にする成長株の探し方についてわかりやすく説明します。
ROEとは?
ROE(Return On Equity)とは、自己資本利益率のことで、株主が出資したお金を元手に企業がどれだけの利益を上げたのかを数値化したものです。
ROEは、当期純利益(会社が1事業年度の営業活動で株主全体にもたらした利益)÷自己資本(株主が出資したお金など返済する必要のない資産)×100%の計算式で求められます。

例えば、株主から集めた1億円を元手に企業が1年間活動し、最終的に2,000万円の利益を上げたなら、ROEは2,000万円÷1億円×100%=20%となります。
ROEが高い企業は資本を効率良く使って高い利益を出しています。反対にROEが低い企業は経営効率が悪いと言えます。
ROEと株主資本
企業が利益を上げると株主資本が増加します。ROEは株主資本に対して当期純利益がどの程度あったかを示しています。ROEが10%で配当をしなければ、1年後の株主資本は10%増えることを意味します。

例えば、ROEが10%で配当をしない企業とROEが25%で配当をしない企業を比較すると、3年後の株主資本はそれぞれ1.33倍と1.95倍になります。

株主資本の増大に伴って株価は上昇するため、ROEが高いほど株価の上昇速度が高くなります。
ウォーレン・バフェットがROEの高い企業を好むのはこのためです。
ROEと株主資本と配当
ROEが25%を維持して配当をしない企業の場合、株主資本、当期純利益、配当、ROEの推移は以下の表のようになります。株主資本と当期純利益が複利で増えていることがわかります。
株主資本 | 当期純利益 | 配当 | ROE | |
100 | 25 | 0 | 25% | |
1年後 | 125 | 31 | 0 | 25% |
2年後 | 156 | 39 | 0 | 25% |
3年後 | 195 | 49 | 0 | 25% |
この企業が、もし当期純利益のすべてを配当に回すとどうなるでしょうか。ROEは25%と高い水準を維持したとしても、当期純利益を配当に回すと株主資本が増えないため、何年たっても株主資本が変わらず、株価の上昇も見込めません。
株主資本 | 当期純利益 | 配当 | ROE | |
100 | 25 | 25 | 25% | |
1年後 | 100 | 25 | 25 | 25% |
2年後 | 100 | 25 | 25 | 25% |
3年後 | 100 | 25 | 25 | 25% |
もし、株主資本が増加しても当期純利益が変わらなければどうなるでしょうか。この場合はROEの水準が徐々に下がります。
株主資本 | 当期純利益 | 配当 | ROE | |
100 | 25 | 0 | 25% | |
1年後 | 125 | 25 | 0 | 20% |
2年後 | 150 | 25 | 0 | 17% |
3年後 | 175 | 25 | 0 | 14% |
一般的に、企業の規模が大きくなると、利益率の低いビジネスにも手を広げることになり、株主資本と比較して当期純利益の増加速度が下がるためにROEが下がるケースが多いです。
ROEの注意点
ROEは業種によって平均値が異なる
ROEは業種によって平均値が異なるため、同業種間での比較には意味がありますが、異業種間の比較には向きません。
負債が多いほどROEが高くなる
ROEの計算には負債(借金)が含まれていません。総資産も当期純利益も同じ企業があり、それぞれの負債の額が異なっていた場合、負債の額が大きい企業のROEのほうが高くなり、効率良く資金を使って利益を上げているように見えてしまいます。企業の総資産は、自己資本と負債の合計です。
例えば、A社とB社では総資産も当期純利益が同じにもかかわらず、負債の多いA社のROEは25%、負債の少ないB社のROEは6.25%となり、B社はA社に比べて経営効率が悪く見えます。
- A社:総資産100億円(負債80億円、自己資本20億円)、当期純利益5億円、ROE=25%
- B社:総資産100億円(負債20億円、自己資本80億円)、当期純利益5億円、ROE=6.25%

ROEを指標にする成長株の探し方

株価が10倍になるような成長株を探したい!

ROEが高い企業の中から探しましょう
ROEは株主資本の増加速度を決める指標で、ROEが高いほど株価の上昇速度が速くなることを説明してきました。
ROEが高い企業の例を見てみましょう。ジャパンエレベーターサービスホールディングス(6544)は、エレベーターの保守・保全、リニューアルで独立系首位の企業で、関東、北海道中心から全国に拡大しています。
業績推移を確認すると、9年間のROEの平均が28%と非常に高いことがわかります。ROEが高い影響で、自己資本比率と株主資本が急速に増加しています。株価も、2017年から10倍以上になっています。


具体的な成長株の条件をいくつか挙げておきます。
- ROEが15%以上を維持している:ROEは高いほどいいですが、15%を目安としています。また、高いROEを維持し続けていることも重要です。株主資本を複利で増やすためには、何年にもわたって高いROEを維持していなければいけません。
- 赤字にならない:経済状況によって売り上げや利益は変動しますが、リーマンショックやコロナショックの時でも赤字になっていない企業を選びましょう。赤字になると株主資本が減少します。また低いところから株主資本を積み上げなければならなくなります。
- 株主資本が増加している:利益を再投資するか配当で出してしまうかは、企業が選択できます。成長段階の企業では再投資してさらに成長することを目指しますが、成熟段階の企業では配当として出してしまい株主資本の増加が緩やかになるケースもあります。
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まとめ
この記事では、ROEと株主資本と配当の関係、ROEを使う際の注意点、そしてROEを指標にする成長株の探し方について説明しました。